子宮や腟の壁が緩んで下がってくる(子宮脱/骨盤臓器脱)、尿漏れが気になる(尿失禁)、これらは決して珍しい症状ではなく、子宮脱は10%以上、尿失禁は50歳以下で約半数が経験すると言われてます。その原因は、骨盤の底を支えている組織がダメージを受ける事です。

骨盤の底は骨がなく(お産の時の赤ちゃんの通り道)、筋肉や膜がハンモックのようになって塞いでいます。ここが傷つくと、緩んで下がってきます。子宮が下がると子宮脱、腟の前側の壁が下がると膀胱瘤となりますが、尿の通り道(尿道)も一緒に緩むことで尿漏れにもつながります。腹圧がかかる動作(息を止めてお腹に力を入れて踏ん張る動作)が傷つける原因となりますが、人生で一番傷つけやすい場面がお産の場面です。普段の生活の中では、重いものを持つ時や便秘の時が注意です。

人生における一番の予防は、お産の時にダメージを与えない事に尽きます。陣痛が来て息むとき、息を止めてお腹を屈めてしまうと、かなりの力が骨盤底にかかります。息を止めないでゆっくり吐きながら息む、背中を伸ばした姿勢を保つ、などのポイントがあります。産後はかなりダメージに弱い時期です。産後(特に最初の3週間)はとにかく骨盤底に負担を加えない(息まない、重いものを持たない、お腹を屈めない)事が重要です。赤ちゃんの抱っこは、息をゆっくり吐きながら、背中を伸ばしたままで、するのがポイントです。骨盤底筋体操や呼吸法で産後の回復を補助することも有効です。


50-60歳頃になると、親の介護で力を入れる場面が増えたり、便秘で息む場面が増えたりする事があります。毎日のようにこれらの場面で息んでいると骨盤底にダメージが溜まっていきます。背中を伸ばして、息を吐きながら力を入れることを習慣にしたり、便秘があれば下剤を使って息まないでも出せるようにしたりすることが重要な予防です。もちろん排便は背筋を伸ばして行います。骨盤底筋体操は、症状が出てしまってから始めるよりも、症状が出る前に始める方が有効です。可能であれば骨盤底筋体操に取り組むと良いでしょう。

骨盤底筋体操

①まず便を我慢するようにお尻に力を入れます。

②ゆっくり息を吐きます。

③息を吐き切ったら力を抜きます。自然と息が入っていくのが感じられると思います。

④これを繰り返します。


*予防には1日100回、治療には1日200回がお勧めです。(20回ずつ、のように小分け可)

*尿漏れが目立つ場合は、まず尿を我慢するように力を入れてから息を吐きます。最初はうまく力を入れられないことが多く、その場合はお尻に力をいれるやり方から練習して、慣れてきたら前側に力を入れるようにします。また、お裾の下に丸めたタオルを挟み、それをつぶすように力を入れると感覚がつかみやすいです。